
楽譜は非常に美しいもので、理系出身の私は学生時代に弾けもしないリストのパガニーニの譜面を購入だけして、弾けるようになりたいという意思とはまったく別に、ただただ譜面を眺めて、その美しさに身震いした、という経験があります。

言語の読み書きも、楽譜の読み書きも、数学の解法の読み書きも、一定のルールを理解して、書面になったものを読み取れるかどうか、あるいは書面の形に書き表せるかどうか、ということなので、その本質がわかっていれば恐れることはないはずなのですが、国語・英語・音楽・数学が、難しさとは別に、まったく別個のものとして扱われている場面を多く見かけます。つまり、算数や数学のために語学や音楽を犠牲にする、というようなことです。もっと具体的に言うと、受験勉強で苦手な算数を勉強する必要があり、時間が足りないので音楽の習い事をやめた、といったケースです。
これは非常にもったいないと思います。特に音楽は数学の力を支えてくれるものだからです。音楽と数学は記号の意味と使い方を理解する必要がある面で言語と少し異なる性格を持ちます。音楽において譜面の記号のルールを理解することが数学の解法の読み書きの礎となるのです。そんな数学と密接な関係にある音楽が、受験時期に一番やめてしまう習い事となっているのは非常にもったいないと思うのです。
私の出身の高校の偏差値をインターネットで検索してみると76と高いようなのですが(私は落ちこぼれの部類でしたが)、音楽の分野で並々ならぬ才能を見せている人が、何人も、何十人もいました。こんな私でも中学時代はピアノに関しては控えめに言って校内で1,2番でしたが、高校に進むとそれ以上に上手な人がゴロゴロいて驚きました。そしてゴロゴロいたピアノの上手な人たちのうち、かなりの人数が大学では理工学部に進み、そして優秀な成績を修めていました。また理工学部に行ったら行ったでまた、国内外で活躍する有名な教授が「ピアニストの道に進もうか、研究の道に進もうか、進路に悩んだ」という逸話を持っていたりもしました。数学(理系科目)と音楽が密接にかかわっていると私がいつも言うのはこうした実体験があるからです。
私も受験時期にピアノの習い事をやめましたが、やめなければ落ちこぼれることはなかったんじゃないかと本気で思うことがあります。感情論であり根性論でもありますが、信念として、勉強をがんばりたいなら勉強以外のことも1つでいいからしっかりがんばった方が、勉強だけをがんばるよりも良い結果が得られると思っています。そして、勉強以外の何かとして、音楽はとてもオススメしたい一品です。それは必ずお子さんの財産になります。

[経歴]
大学で医療工学を学び、卒業後に家庭教師業のかたわら医師を目指して医学部の再受験を経験。15年以上家庭教師業に携わり、小学生から大学生まで幅広く指導に当たる。子ども向け新聞の編集部に勤務し、学習面を担当していたことも。オリジナル学習問題の作成や入試問題の解説執筆などを経験する。中学受験指導、理数系科目の指導が専門。自身の学習経験・指導経験から、学習に最適な年齢があること、さらには脳の発達段階に応じて直感力や論理力などの様々な力にはそれぞれ伸ばすための適齢期があることを確認。学習人生に最も影響を与える幼児期に着目し、効果的かつ時代の要請に合った教育プログラムを考案。従来の幼児教育に代わる次世代の教育スタンダードとして世界に通用する学習法「スピロメソッド」を企画立案中。3児の母。
[受験歴]
中学受験:慶應義塾湘南藤沢中等部一次合格/鷗友学園女子中学校合格(入学辞退)
高校受験:東京学芸大学附属高校一次合格/慶應義塾女子高等学校合格(入学)/渋谷教育学園幕張高等学校特待生合格(入学辞退)
大学以降:
慶應義塾大学理工学部入学(内部進学)卒
慶應義塾大学理工学研究科前期博士課程合格(内部進学・入学辞退)
大学入試センター試験5教科7科目90%超
東京医科歯科大学医学部学士編入学試験一次合格